神戸に帰省すると、もっぱら聞き役に回るわたしだが、こちらから進んで持ち出す話題もある。子どもたちのことだ。
「このあいだ、わたしの誕生祝いにって、娘たちが食事に誘ってくれたんですよ。新宿のスペイン料理屋さん」
「あら、いいわねえ。優しい娘たちに育ったわよねえ」
わたしの娘たちは、当然義母の孫になるわけで、話は自然とはずむ。
他人が聞けば自慢話になるようなことや言い回しでも、あるいはくだらない愚痴であっても、一緒に盛り上がって楽しめる。家族ならではの時間である。
もう30年ほども前のことになるが、生まれたばかり、まだ新生児だった息子が高熱を出し入院した。原因不明の熱は5日も続き、大きく生まれた彼が保育器のなかに入っていると小さくなってしまったように感じた。
「赤ん坊、風邪ひかせたんだって?」
吸う子がいないおっぱいの張りだけでも痛いのに、そんな何気ない言葉が胸を刺す。なぐさめられることさえ辛く、誰にも、息子が入院したと話さなかった。
だが、両親に言わないわけにもいかない。受話器を手にすることすら億劫だったが、電話し状況報告だけ淡々と告げた。
6日目にようやく熱が下がり、いわゆる峠を超えて息子は回復へと向かっていった。原因は最後までわからなかった。
息子が退院して、義母に電話したときだったか。義母が言った。
「誰に話すのも辛くてね。お孫さん、元気?って聞かれてもただ、はい、って答えていたの」
それを聞いて、ああ、お義母さんも同じ気持ちだったんだ、とハッとした。
じつの両親にも義母にも息子のことを話すのが辛く、最小限の報告しかしなかったけれど、申し訳なかったな、と思った。
そのとき、家族ってこういうものなのかと、あらためて知った気がする。
子どもたち、それぞれに個性的で、親としては悩みも尽きないけれど、義母は彼らのすべてを肯定し、愛しているのだなあと、話すたび考えさせられる。
帰りは新幹線のぞみで東京経由。あずさがまた1時間も遅れて、とほほでした。
帰ってくると、庭のクリスマスローズの背が伸びていました。
うつむいて咲くのがまた、可愛いんですよね。
それぞれの色を楽しませてくれています。
さえさ~ん、うちもありました。
長女の所の次男が生まれて10日ほどたった時に、高熱が出て4日ほど入院しました。
新生児は親の免疫があるから熱なんかでないと思ってました。
だから、私もその時は人に言えずにいました。
ブログにも書かなかったわ・・・
お医者さんが言うには、親でも免疫がない菌やウイルスが入ると、新生児でも熱が出る事がある。
きっと上の子から何か感染したんだろうって事でした。
私も娘も、さえさんと同じ気持ちだったんです。
でも今なら、話せるのにね。
ユミさん
わ~ん、そうだったんですね。
辛かったですよね~おたがい、大事に至らず元気に育ってくれてよかったですよね。
そうそう。免疫があるのにどうして?って、自分を責めたり、悩んだり。
子どもの病気に胸を痛めない親なんて、そしておじいちゃんおばあちゃんも、いないんですよね。
そのときの辛さ、知っていることが、親として人としての心を育ててくれてもいるのかな?
お孫ちゃんたち、元気で大きくなあれ♡
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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