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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

キッシュ焼いて

「あ、この匂い……」

キッチンには、記憶をくすぐる匂いが漂っていた。

バターと卵と小麦粉を焼く匂い。

「ああ、昔よく焼いたなあ、クッキー」

クッキーだけじゃない。ケーキやそのほかのお菓子もよく焼いた。3人いる子どもたちのバースディにはいつもスポンジケーキを焼き、誕生日の主役のリクエストに応え、具やクリームを用意しみなでデコレーションするという決まりごとまであった。あの頃は、よくキッチンに漂っていた匂い、馴染みの匂いだ。

もう5年、いやもっと焼いてないかも知れない。娘たちに教えたのすら何年前のことだか思い出せない。それがまたこうして、この匂いを嗅ぐことがあるとは。

 

初めて、キッシュを焼いたのだ。友人宅で夫と彼女のご主人と4人でホームパーティをした際、出していただいたのが美味しくて、レシピを教えてもらった。せっかくだから、ベースのタルト生地も自分でこねて焼いてみた。なつかしい匂いは、タルト生地が焼きあがるときの匂いだ。

 

子どもの頃、家にはオーブンはなく、外国の料理本などに出てくるオーブン料理に憧れていた。だからひとり暮らしを始めたときにも、電子レンジではなくオーブンを買った。オーブントースターに毛が生えたくらいの小さめのオーブンだ。それでも、お菓子やパン作りは楽しく、六畳一間のアパートにバターや小麦粉を焼いた匂いが漂うと、まるで外国の大きなキッチンで料理をしているような気分になれたっけ。なつかしい匂いを吸い込み、胸のなか、果てしなく深いところで凍っていた憧れが、すっと溶けて光を放つのを感じた。

 

キッシュは美味しかった。彼女のようにはうまく焼けず、生地はちょっとボロッとしてしまったが、味は申し分なくワインにぴったりだった。いつのまにやらなくなっていたタルト型も買ったことだし、具もいろいろ変えて楽しめそうだし、なつかしい匂いとともに、今後もワイン&キッシュな夜を楽しもうと思う。

CIMG2843タルト生地です。見栄えはあまりよくありませんが、何とか焼けました。

CIMG2849ズッキーニとシメジとベーコンとチーズのキッシュ、完成図です。

CIMG2924昔、気に入って使っていたケーキ皿です。最近出番がなくなったなあ。

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PROFILE

プロフィール
水月 さえ

随筆屋。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

夫が営む広告会社で経理を担当。

2012年から随筆をかき始める。

 

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。

 

『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

随筆かきます。

 

依頼はメールフォームからお願いします。

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