マドリッドのアトーチャ駅から特急AVANTに1時間乗り、乗り換えてひと駅。アルマグロへ行った。
駅は無人。駅名「アルマグロ」も剥がれかけている。
「何もないね」
「ないね」
不安のなかに小さな期待を忍ばせて、旧市街の中心となる「マヨール広場」まで15分ほど歩いた。
アルマグロは、ラ・マンチャ地方の旧都で、レコンキスタ(キリスト教国家によるイベリア半島の再征服活動)時代の攻防戦の基地であり、このときにアルマグロを拠点としたカトゥラバ騎士団が村を作ったと伝えられる。
その後17世紀には、ヨーロッパじゅうの富裕者が豪邸を建て、定住。
そのときに建てられたマヨール広場や、娯楽施設だった劇場が当時のまま残っている。
『地球の歩き方・スペイン』には、スペイン一美しい広場がサラマンカのマヨール広場なら、田舎の広場でいちばん美しいのはアルマグロのマヨール広場だとかかれていた。
その「マヨール広場」は、わたしには、なんというのだろう。”美しい”というのとは少し違う印象を与えた。”可愛らしい”と、似ているけれど、また違うような。なつかしいというか、既視感とも似ているような。
ああ、学校の校舎だ、と腑に落ちた。
古い木造の小学校の校舎の前に校庭が広がっているような、わたしが子供の頃の、昭和の小学校の記憶が呼び起こされたのだった。
「マヨール広場」をゆっくりと歩き、そこから白い建物が並ぶ街へと歩き始めて夫がぽつりとつぶやいた。
「まるで、映画のセットみたいだな」
ほんとうに、そうだった。
アルマグロの街は、どこを歩いても白い家と同じ道幅の細い道が続いていた。そしてあまりに静かで、人の気配がなく、確かに撮影のために作られた建物が並んでいるように見えた。
不意に、永遠に続く白い迷路に入り込んでしまったような錯覚を起こし、立ち止まって青い空を見上げたのだった。
レンフェのアルマグロは、無人駅でした。「ウェス・アンダーソンすぎる風景展」を観に行ったことを思い出しました。
ターコイズの窓枠が印象的な「マヨール広場」。
広場の両側に、3階建てのまるで校舎のような建物が向かい合っています。
広場の向こう側には、教会や市庁舎が。
村を歩くと、どこまでも白い住宅が並んでいます。
雨樋を、ドラゴンっぽく飾っている家が多かった。
白い家と平坦な路地が続き、まるで迷路のようでした。
夜のマヨール広場。両側にカフェがオープンし始めた頃。
夕食は、今回の旅行で初めてレストランへ行きました。「La Parrilla de San Agustín」で。
しばらく、貸し切りのようにわたしたちだけでした。
茄子の糖蜜がけ。NHKの『旅するためのスペイン語』のスペイン料理コーナーで観た料理だ~めっちゃ美味しかったので、帰ったら作ってみようと思います。
Google翻訳では「サーロインステーキ」と訳されたけど、ヒレ肉でした。
アルマグロ特産のマンチェゴチーズを使ったチーズケーキは、塩味が利いていて美味でした。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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