セビージャからレンタカーで地中海に向かって走り約3時間、アンダルシアの小さな村フリヒリアナへやって来た。
フリヒリアナは、16世紀グラナダを追われキリスト教改宗を強いられたモーロ人たちが、ここで反乱を起こした歴史を持つ小さな村。
『「スペインの最も美しい村」全踏破の旅』で知った村である。
アラブの影響を色濃く残しつつ、真っ白な美しい家々が建ち並ぶ、さながら南国を思わせるリゾート地のような雰囲気が漂う小さな村をのんびりと歩くのは心愉しかった。
旧市街の目抜き通りであるレアル通りには、村の教会があり、昼間通りかかったその前のレストランで夕食をとることにした。
食事は最高だった。
そして、サーブしてくれた男性と少しだけ会話することができた。
食事を終えて、珈琲を頼んだときのこと。
「Where are you from?」「Japan」といういつもの会話を交わすと、彼が日本語で言った。
「ニホンキレイ」
そして、黒澤明の『七人の侍』を観て、日本は美しい国だと思ったと英語で話した。夫が、自分もセブンサムライは大好きな映画だというと、うれしそうに微笑む。
珈琲を持ってきた彼に、わたしが調べたスペイン語で「フリヒリアナは美しい」と言うと、日本はもっと美しいと笑った。
まさか地中海にほど近いスペインの小さな村で、黒澤の話をするとは思わなかったねと夫と話していると、ふたたびやって来た彼がショットグラスを2つ、テーブルに置く。
オレホという食後酒だという。ご馳走すると。
不思議だった。
こんなに遠いところで、初めて会った誰かと、例えわずかでもこんなふうに気持ちを通じ合わせていることが。
村の入口にあるホテルの窓から見た、フリヒリアナの旧市街。
白い家と石畳の細い坂が続く、路地歩きが楽しい村です。
キリスト教改宗を強いられたモーロ人たちが反乱を起こした歴史のタイル画。村のあちらこちらに見られます。12枚あるそうです。
道標も、モザイクでかっこいい!
延々と続く、白い家。
ペパーミントグリーンのミニバイクが停められていて、当たり前だけど、ここで暮らしている人がいるのだなあと実感しました。
それぞれの住人が、工夫を凝らし村を美しく飾ろうという心意気も見られます。
展望スポットから見た風景。手前は旧市街。向こうに広がるのは新市街。
1640年に村人の生活のために建てられた古い水道「ラ・フエンテ・ヌエバ」は、観光スポットになっています。水を手で掬うと、冷たくて気持ちよかった。
「サン・アントニオ教会」は、ルネッサンス様式。
白くシンプルな内陣。
夜の「サン・アントニオ教会」。
前菜は、トルティージャとは違う、海鮮が入ったスクランブルエッグ。
メインは鮪のステーキ。2品をふたりでシェアしてお腹いっぱい。
ご馳走してもらった食後酒「Orujo(オレホ)」。ティラミスのようなキャラメルのような甘いお酒でした。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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