大きなパプリカをいただいた。これまでにないような肉厚なパプリカだ。明野産のものだという。
手にした瞬間に「赤ピーマンのロースト」にしようと決めた。
川上弘美の大好きな連作短編集『神様』で、くまが作っていた料理だ。
『草上の昼食』のなかで、だからピクニックのお弁当だった。
赤ピーマンが甘いね。「薄皮を剥くのが少しむつかしいでした」
どうやって剥くの。「オーブンで十分ほど焼いて、それからすぐに紙袋に入れて蒸らします」なるほど。「うまく蒸れるとするする剥けます」
気持ちよさそう。「気持ちいいです」
人の世に馴染めずにいる主人公〈わたし〉は、マンションの3つ隣りに住むくまとの友人関係を大切にしていた。くまは「雄の成熟した」動物の熊である。
パプリカは、甘かった。
本当なら「紙袋に入れて蒸らし」に挑戦したかったが、手頃な紙袋がなかったので、次回に持ち越すことにした。
憧れの「くまのピクニック料理」に近づいた気がしたのは、言うまでもなく肉厚のパプリカのおかげだろう。
ほかにもくまは、〈わたし〉との別れのピクニックに腕によりをかけ料理を準備した。鮭のソテーオランデーズソーズかけ、茄子とズッキーニのフライ、いんげんのアンチョビ和え、ニョッキ、ペンネのカリフラワーソース、苺のバルサミコ酢かけ、ラム酒のケーキ、オープンアップルパイ。そしてバルバレスコ。だが、赤ピーマンのローストに何より魅かれるのは、やはり
気持ちよさそう。「気持ちいいです」
の文章があるからだと思う。筆の力が残すものの大きさに感じいる。
次回はじっくりオーブンで焼き、紙袋に入れて皮を剥こう。我が町明野では、こんなに肉厚なパプリカが採れるのだから。
このお皿、大皿なんですよ。30㎝×30㎝の。小皿に見える(笑)
夕食を済ませてきた夫とまったりワインタイム。(わたしは、ビール)このローストマリネのレシピ、シンプルだけど美味しかった! エクストラバージンオリーブオイル大さじ2、白ワインビネガー大さじ1/2、にんにくのみじん切り一片。パプリカの肉厚さが旨味を出していたんだとは思うけど。
『神様』の紹介コラムは → 「人間のなかで暮らしていくのが辛くなったときに、どうぞ」
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。