夫が、ずっと欲しいと探していたちろりを手に入れた。
鈍い輝きが美しい、錫(すず)のちろりだ。
いわずと知れた酒を温めるための道具だが、独特な名"ちろり"の由来ははっきりしないという。
・ちろりとすぐに日本酒が温まるから
・酒好きが待ちきれずにちろりと舌を出すから
・囲炉裏(いろり)で温めるから
など諸説あるようだ。
持ってみて、その重さにまず驚く。見た目より重い。ほかの金属は一切混ぜることなく錫100%で作っているからか、そのしっかりとした重さに手作りのものならではだと感じた。
錫は熱伝導率の高い素材で、均一に日本酒を温められるという。さらに錫に含まれる成分が日本酒の雑味やクセを抑え、よりまろやかな味わいになるというから、名が定まらない頃から長く使われ続けてきたことにも納得する。
偶然にも、旅する予定だった能登半島への入口、富山県の高岡市にある「能作(のうさく)」というものづくりの会社の製品だった。
週末、写真家の夫が能登半島の被災地の写真を撮りたいと言い、ふたり出かけた。わたしはサポートしかできないが、能登半島の今を目で見ることはできる。

美しい輝きが、写真にはなかなか写りません。

覗きこむと、吸い込まれそう。

底には、刻印がありました。

このお燗の温度、なつかしい。山本文緒の短編集『ファースト・プライオリティ』の「燗」に載っていました。写真はありませんがちろりで温めて「上燗」くらいで飲みました。ほんとにね、まろやかなんです。

冷やにも、涼(すず)冷え、花冷え、雪冷えという美しい名があるそうです。ちろりで冷酒を楽しむ季節も、すぐにもやってきそう。これは、常温で飲んだ七賢の風凛美山。

いろいろつまみながらの我が家の日本酒の夕餉。
能作のショップは富山駅近くにあり、富山土産セレクトショップにも、錫製品が並んでいました。昨夜は富山泊。今日、山梨に帰ります。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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