ホテル近くの笠間芸術の森公園には、「笠間工芸の丘〈クラフトヒルズKASAMA〉」のほか「茨城県陶芸美術館」がある。
そこで、企画展「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン/ムーミンの食卓とコンヴィヴィアル」が、開催されていた。
グラスアートは150点以上展示されていて、透明感あふれるものから、ビビッドカラーが目に飛び込んでくるようなものまで、グラスアートとひと括りにできないほどに多様な作品が並ぶ。
「北欧の自然や風土を想起させるガラス作品」とチラシにある通り、鳥や動物、花や木、きのこや海、氷山など、たしかに自然のなかでしか目にすることのないモチーフが多かった。
そのなかにひとつ、自らの身体をモチーフにした作品があった。
身体そのものではなく、事故によってできた無数の傷痕をアートにしたのである。
不慮の事故に遭ったラークソは、自分の身体に残った無数の傷痕を眺めながら、それさえも美しいと思ったという。
美しいと感じるものは、人によって違う。それは、わかっている。けれど、人間の、それも自分の肌に残った傷痕を美しいと感じることのできる人がいる、ということに驚いた。そしてそれを、アート作品としてモチーフにしようと考えた発想に、作り上げてしまった意志の強さに、驚いた。
「傷痕」は、壺のようにも人のようにも見える形、大きさをしている。
白いマットなガラスに黒く細い線をフリーハンドでランダムに入れていったようなデザインで、もちろん、グラスアートを作り上げる工程には詳しくないので、あとからペインティングしたのか、吹きガラスのように一瞬にして形や柄ができあがるものなのかはよくわからない。
モノクロームのその作品は、静かにそこに佇んでいた。
奇をてらう風なところは微塵もなく、落ち着いた個性を感じさせる作品だった。
自分が何を美しいと思うのか、ゆっくりと振り返ってみるきっかけとなった。
ムーミンってフィンランドだったんですね。北欧のどこかという曖昧な知識しか持っていませんでした。もちろん、ムーミンの「コンヴィヴィアル展」も楽しみました。「コンヴィヴィアル」は、ご馳走や共生を意味する言葉だそうです。
「カラー」(グンネル・ニューマン)。
チラシの表紙になっていた「ヤマシギ」(カイ・フランク)は、手のひらサイズの小さなアートでした。
こちらも鳥をイメージした作品「眠れる鳥(黒い鳥)」(ティモ・サルパネヴァ)。
「ブルース」(ティモ・サルパネヴァ)。
「濃い青のガラスが音符♩のようだね」とケラモんズアイ解説にありました。ケラモんは、教育普及キャラクターだそうです。
「杏茸」(タピオ・ヴィルカラ)。胸の奥に小さな光が射し込むような美しさ。
「傷痕」(ヨーナス・ラークソ)。
「ジグザグ」同じくラークソの作品です。「傷痕」と同じ頃に作られています。
「色違いのセータを着た兄弟が仲良くならんでいるように見えるね」と、ケラモん。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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