夕刻の八ヶ岳が、これまでに見たことのない光を纏っていた。
神秘的な、幻想的な、神々しい。
そんな言葉が、ぐいっと押し寄せてくるような光景だ。
しばし見とれ、写真に撮り、翌日になってようやく空の写真図鑑『空の名前』を開いた。「光の章」だ。
以前「光の章」を開いたときに「彩雲」という言葉を知った。
虹色に光る雲を見つけたときだった。
この空にも、名前があるかもしれないと開いたのだった。
しかし、これというものはなかった。似ている写真は「天使の梯子」だが、私が見た風景のなかに「梯子」はなかった。
雲の切れ間から差し込む、幾筋もの神々しい御光は、あたかも天と地を行き交うための階段のように思えます。そこでヨーロッパでは、これを天使の梯子、ヤコブの梯子などと言っています。
「入日の御光」とも違った。
夕方になって、太陽の光が雲や山の間を通り抜けると、夕映え空に幾筋もの光の帯が描き出されることがあります。これを入日の御光といいます。
ほかに、「セント・エルモの火」「モルガナのお化け」「裏御光」などなどあったが、どれも違っていた。
この神秘的な、幻想的な、神々しい空には、名前がないのである。
写真では、神秘的と感じた瞬間そのままには撮れていませんでした。データを見ると、18時ジャスト。
八ヶ岳は、中腹に抱える雲と対話していました。
まだ肉眼では、田んぼが緑色に見える時間です。日が暮れてまだ目視できる時間を「薄明(はくめい)」というそうです。
雨も、しっとり降っていました。
18:11には、夕焼に変わって。
雲も逃げていくかのように、散らばっていきました。風景がだいぶ変わります。
西の空。茜色が、紫を帯びてきました。
18:17です。肉眼ではもう田んぼの緑は見えません。夕焼けも闇に溶け出していきました。
翌朝の何もなかったかのような八ヶ岳。何もなかったんだけど(笑)
本当に神々しいですね。
いつまでも眺めて痛い空ですね。
こうしてまた朝日が昇ってくる、日本って美しい国だな~と思う瞬間です。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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