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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

「はやくうちに帰りたい」

井上荒野の『ママがやった』は、連作短編集で、登場人物たちが入れ代わり立ち代わり語り手となる。

大まかなあらすじは、冒頭、年老いた母親が夫を殺してしまい、奔放に生きた夫、3人の子供たち、そして母親のこれまでがコミカルに綴られている。

 

そのなかに息子、創太の中学時代のことを描いた「はやくうちに帰りたい」がある。父親は相変わらず愛人と過ごしているのだが、それとは別に、とても共感した部分があった。

創太の初恋のクラスメイト、織愛(おりえ)がかいた詩の内容だ。

「はやくうちに帰りたい」というのが、その詩のタイトルだった。それは織愛の、口に出さない「口癖」で、本当にうちに帰りたいと思うわけではない。それが証拠に、家にいるときにも頭の中で度々それを口ずさんでいる、という内容だった。

創太は、驚く。

俺と同じだ、と思ったのだった。「はやくうちに帰りたい」と、家にいても思うところまで同じだった。

すっかり忘れていたが、わたしも十代の頃、そんなふうに思っていた。

大人になり生まれた家を巣立ってからは、そんな気持ちは薄れていたから、とても久しぶりに思い出し、だからとても新鮮だった。

 

若い頃には、恋人と会っているのにもかかわらず淋しい気持ちになり、彼と電話で話したいなと思ったことがあった。目の前にいる彼と。

それともちょっと、似ている。

 

片方の手にたしかに持っているのに、もう片方の手でさらにそれを探してしまう。

人というものはどこまでも、なにかを探し追い求め続けるものなのだろうか。

解説は、池上冬樹。純文学ファンにもミステリファンにも薦めたい1冊と、ありました。

 

☆シミルボンサイトで、連載中です。

【どこへもいけない気持ちを描く井上荒野という”穴”へ】

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PROFILE

プロフィール
水月 さえ

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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