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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『ツナグ~想い人の心得』

吉川英治賞受賞作『ツナグ』の続編。

設定は、同じ。

死者に会うチャンスが一度だけある。使者(ツナグ)が仲介者を務め、死者が承諾すれば満月の夜に一晩だけ会うことができる。生きているあいだに一度だけ、死んでからも一度だけしかそのチャンスは与えられない。

 

高校生だった歩美は20代となり、会社勤めをしながら使者の仕事も続けていた。

・片思いの彼女の心を解こうと代理でやってきた若手俳優~「プロポーズの心得」

・歴史上の人物に会いたいという年老いた研究者~「歴史研究の心得」

・海の事故で6歳の娘を亡くした若い母親と、病気で結婚したばかりの娘を亡くした老女は、同じ満月の夜に娘と会う~「母の心得」

・突然、父親を亡くした娘。父娘と懇意にしていた歩美に迷いが生まれる~「一人娘の心得」

・京都の料亭の娘は、16歳の若さで他界した。そこで働いていた若かった男もすでに85歳。死んだ娘に何度も断られてきたが、彼からの依頼は続いていた~「想い人の心得」

「同じ時代に生きられるということはね、尊いです」

出会った人のなかには、今生きている人もいれば、亡くなった人もいる。

「想い人や、大事な人たちと、同じ時間に存在できるということは、どれだけ尊いことか」

年老いた依頼人は、ひとり言をつぶやくように、歩美に言った。

 

個人的には「母の心得」が、胸の深いところに落ちた。

「――母親って、自分の子どものことはなんでも自分に責任があるんじゃないかって、そんなふうに思うものなのかな」

母親のいない歩美は、叔母に問いかける。

「親だもん」

叔母は、当然というように答える。

本当は責任など何もない”出来事”かもしれない。それでも、母親は自分のせいだと思ってしまう。自分を追い詰めてしまう。

ふたりの母親は、それぞれにそんな思いを抱えつつ、死んだ娘に会うことを決めたのだった。

 

「プロポーズの心得」には、『ツナグ』「親友の心得」に登場した嵐美砂のその後が描かれていて、美砂と同級生でもあった歩美は、本家の当主を引き継いだ8歳の少女、杏奈に代理を頼む。堂々とした物言いは、大人顔負けで、歩美でさえ頭が上がらない。

ラストは、続編3が楽しみな終わり方。多分、続いていくだろう。

出版されているのは知ってたけど、文庫になるのを待って購入しました。

10年以上前に手にした『ツナグ』は、新刊でした。辻村深月は、デビュー作辺りから中学生だった末娘と一緒に読んだ作家です。

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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