晴れたので、サンタルチア方面へ出かけようということになった。
なったが、1号線は運休したままで交通の便が悪い。15分歩いて着いたバス停に、待てどもバスは現れなかった。20分以上待っただろうか。
「歩いた方が、早かったんじゃない」
「ローマのバスは、すぐ来るし、便利だったのにね」
ナポリは信号がほとんどなく、車は混み合い、そのあいだを人が渡る。譲り合いというよりは我先にというのがまるでルールとでもいうかのように混沌としている。
ため息をつき、あきらめかけた頃、ようやくバスはやってきた。
向かうは「卵城」だ。
細長く伸びる埠頭の先端の小島に立つ小さな城で、名は伝説に由来する。
詩人ヴェルギリウスが基礎部分に魔法をかけた卵を埋め、「この卵が割れない限り、城が崩れることはない」と言ったという。
「晴れたね~」「気持ちいい」と海沿いの道を歩きながら卵城につくと、なんと「嵐のため閉鎖」との張り紙が。
「なんか、予感してたんだよ」
夫が肩をすくめる。リスボンで、川に浮かぶように立つ「ベレンの塔」の目の前まで行って入れなかった。とてもよく似たシチュエーションだった。
いい散歩だったと思うことにして、バス停まで歩く。どうせなら違う道をと、違う場所から乗ることにしたが、これがまた、これでもかというほど待った。観光客なのか、仕事帰りなのか、大勢の人が待っていた。
そして夜。わたしたちは、ピザ屋の前で待っていた。
行列ができるラーメン屋にも並ばない、並ぶのが嫌いな夫婦である。
けれど、ナポリまで来て、ナポリ・ピッツァを食べずしてどうする。
人気№3に数えられるナポリ・ピッツァの店「ソルビッロ」は、30分以上は待つといわれる予約を取らない店だったが、挑戦することにした。
「もう、40分は待ってるけど、どうする?」
夫の言葉に、迷いつつも返した。
「そうだね。でもさ、今日は待つ日なんだよ。バスも待ってたら来たし」
卵城には入れなかったけどとは言わず、待つこと約1時間。本場焼き立てナポリ・ピッツァにありついたのだった。
サンタルチアの海に浮かぶように建っている「卵城」です。
嵐で(?)閉鎖していました。残念!
観光客が、入口まで行っては戻ってきていましたが、みな笑顔でした。しょうがないね、イタリアあるあるだね、といった雰囲気。
ヴェスーヴィオ火山が、姿を現してくれました。
てくてく歩いて、バス停へ向かう途中に見た、17世紀、スペイン王のために建てられた「王宮」です。王が住むことなく次の時代を迎えたとか。
ショッピングアーケード「ウンベルト1世のガッレリア」を通って。
「ヌオーヴォ城」近くのバス停で、ふたたび待ちました。大勢の人が待っていました。
夜。人気ピザ屋№3のひとつ「ソルビッロ」の前です。
ピッツァ・マルゲリータ。
ピッツァ・ロドルフォは、生ハムとルッコラ。堪能しました。待ってよかった。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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