1月からドラマも始まった『やめるときも、すこやかなるときも』は、2回までドラマを観て、それから読み始め、一晩で読了した。
『あなたの番です』で、変人役を好演し異彩を放った奈緒のが主演と言うことに魅かれたのだが、小説のおもしろさに止まらなくなった。
主人公ふたり同じ32歳の壱晴と桜子の視点で、交互に語られてゆく。同じシーンを違う目線で追うことも多く、ふたりの作者によって紡がれた『冷静と情熱のあいだ』を連想した。
主に椅子を作る家具職人壱晴は、毎年12月のある日を境に声が出なくなる。18歳の12月に起こった出来事を忘れようと、一夜だけのぬくもりを求めて抱いた女は数知れず。そんな壱晴を理解してくれる職人哲さんの下で働いていたが、今は独立しひとりで工房を営んでいる。
印刷会社に勤める桜子は、父親の会社が倒産して以来、家族を支える大黒柱だ。飲んだくれて暴力をふるう父、抵抗せず脅える母、でき婚でちゃっかり家を出ていった7つ下の妹。桜子は、働き詰めでいまだ処女さえ捨てられずにいる自分にあせっていた。
そんなふたりが知り合いの結婚パーティで出会い、一夜をともにするのだが。
とにかく結婚したい桜子。過去を忘れるために桜子とつきあい始める壱晴。
ふたりの打算が正直に描かれているのが、おもしろかった。でも実際に、恋愛って、結婚って、人が生きることって打算だらけなのかも。
けれど始まりはそうであっても、魅かれあう気持ちは純愛だ。
相手の小さなひと言に惑い、何気ない表情に一喜一憂し、来ないメールを待つ。
以下は、壱晴目線のシーンから。
屋上からは人間が作り出したさまざまな建物が見えた。その建物の中にたくさんの人がいて、それぞれが違う人生を生きている。日々起こる喜怒哀楽、人から見れば取るに足らない小さなことで、真剣に苦しんだり、泣いたり、怒ったり、時折人を恨んだり、そんな感情の泡立ちすら、ここに立って想像すると、愛おしいものに思えてくるのが不思議だった。
ひとりの人の小ささ、その心の奥深さ、生きることの切なさ、死を受けとめる難しさ、それでも誰かと一緒に生きていきたいと思うのはなぜか。
そんなことのひとつひとつを大切に散りばめ、紡がれた小説だった。
湖は、舞台となる松江の宍道湖ですね。今後のドラマも楽しもうと思います。
この本は、先日書店で目にして気になっていました。
この作家も最近なのでしょうか。ほかのブログの方で目にしていました。
面白そうな小説ですね。
そして、ドラマも面白いそうですね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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