テルミニ駅周辺に、「サンタンドレア・アル・クイリナーレ教会」はある。
ベルニーニ設計のこの教会は、内装に薔薇色の大理石がふんだんに使われていることから「バロックの真珠」と呼ばれているそうだ。
けれど注目を集めているのは、その美しさだけではない。
敷地に奥行きがないゆえに、ベルニーニが、これまでにはなかった”悪条件”として捉えられるその形に屈することなく、最高のものを創り出そうと考えたことだ。
彼は「横長の楕円形」という、これまでにない教会を創り上げた。
「サンタンドレア・アル・クイリナーレ教会」は、扉を開けると主祭壇が迫るように目に入ってくる。そのうえの聖アンドレア像が、雲に乗り天を仰いでいる。薔薇色の大理石で造られた四本の円柱。祭壇画「聖アンドレアの殉教」と天使たちを光り輝かせる祭壇上の明かり。クーポラの中心からは聖アンドレア像をも照らす光が注がれている。
ベルニーニは教会を創るとき、全体を劇場とみなし、光、色、絵画、彫刻、それらの調和など、すべてを最善の形で創り上げることに手を尽くしたという。
「サンタンドレア・アル・クイリナーレ教会」の立地により自らに与えた「横長の楕円形」という高いハードルは、ベルニーニの創造力をかきたてたのだと語られている。
彼には、困難を乗り越えることで常に自分を高めていくという信念や気質があり、「もしそれ(障害)がなかったならぱ、それを作る必要がある」とまで言っていたそうだ。
のちにこの「サンタンドレア・アル・クイリナーレ教会」での経験が、「サン・ピエトロ広場」の設計に活かされることになる。
テルミニ駅近くの街角、車も人も行き交う道沿いの一角の限られた場所だからこそ創られた教会。
そこには、ベルニーニの創作への強い思いが、今も静かだけれど確かな熱を発していた。
「サンタンドレア・アル・クイリナーレ教会」外観です。
主祭壇です。グリエルモ・コルテーゼの絵「聖アンドレアの殉教」と、薔薇色の大理石を使った柱が印象的。
ベルニーニは、この聖アンドレア像がいちばん最初に目に入るように設計したといいます。
上部の明かりも計算して、デザインされているそうです。
天使たちに天井からの光が当たり、表情豊かにしていました。
楕円形のクーポラは大きく、写真には収まりませんでした。
クーポラの真ん中から、下をのぞいている天使たち。訪れた人の心を摑む要素が詰まった教会でした。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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