月1回の句会、5回に参加して、これは基本のキがなっていないのだぞ、と気がついた。
これまでは、ただ感性に任せてぼんやり詠んでいただけだと。
今頃? といわれそうだが、5回の講座で俳句を勉強し始めて、まだ1年と経たずして気づいたのだから、そこはよしとしよう。
ロングセラーだという『実作俳句入門』を開いた。
著者の藤田湘子は、1926年生まれで16歳で俳句を始めた男性の俳人。2005年に亡くなっている。
「自分のために、自分の俳句をつくる」
それが出発点であり要。そこを忘れずに、とある。
読み始めると、乾いたスポンジが水を吸い込むように、俳句のなんたるかが身体じゅうに入ってきた。
まずは「俳句の基本」の章。
俳句の基本〈俳句の三要素〉は、この3つだとある。
五・七・五 ――前提(俳句は型である)
季語 ――約束(俳句のいのち・季語)
切字 ――手段(切字の効用)
「五・七・五は短い」「五・七・五はリズムである」
「季語には三つの働きがある」①季節感②連想力③安定感
「切字の効用」など。
そして、「実践編Ⅰ 実作のポイント」には、初心者が陥りやすい過ちが並んでいる。
「気どりのポーズをなくす」「陳腐なものは陳腐」「省略は佳句の出発点」「今を描写する」「季語は離して使う」「〈だから〉ではない」「季語を修飾するな」「一句一動詞」「〈てにおは〉の妙味」「中七の字余りは解消せよ」「下から読んでも」「〈孫〉の名句はない」「テレビ屋になるな」「風流ぶりをやめよ」
最後に「実践編Ⅱ 作句のテクニック」とくる。
たとえば「1. 絞る」では、目の前に広がる風景、多くのものがあるなかから「これ」というものをひとつ決める。絞る、ことが大切だとある。
まず、眼のまえのいちばん小さな季語を選びだすということがあります。そして「これを詠むぞ」と、しっかり自分に言いきかせる。ここはもう肚(はら)をきめる大事なところなのです。それがきまったら、おもむろに遠くを見る。山が見える。あれは火山だ。そこまで自分の立っているところからずっと径がつづいている……。
例句は、こちら。
火の山へつづける径や夏あざみ
作者は「夏あざみ」を選んだ。
対象をそこにしっかり絞ることにより、次に視線を遠くに移したとき、「夏あざみ」に合わないものを排除できる眼を持つことができるという。
またこれは、上五に大きなものを置く技法になる。
(遠――中――近)or(大――中――小)or(全体――部分)
と視点を絞っていくことで下五が鮮明さを放ち、余韻を確かなものにする。
絞る。なるほど。
そんなふうに作句のテクニックが、16章に渡り深く掘り下げられている。
ラストは「俳句を味わう」。
高浜虚子、飯田蛇笏ほか、藤田湘子が師事していた水原秋桜子など30以上の俳人の句を惜しみなく収めている。
そして。
愛されずして沖遠く泳ぐなり
解説に載っていた藤田湘子の初期代表作の句だ。小田原の海辺の町で生まれ育ったという。こんな句もある。
あめんぼと雨とあめんぼと雨と
藤田湘子著『20週俳句入門』も、俳句入門バイブルといわれているという。合わせて読みたい。
併せて『俳句歳時記・春』を。文庫版は、いつでも鞄に入れておけるので分厚い1年分よりも季節ごとにと選びました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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