10月の句会の兼題は、どちらも秋の季語「柿」と「紅葉(もみじ)」。
「柿」は、植物の季語で、傍題に「甘柿」「渋柿」「富有柿」「次郎柿」「熟柿」「木守柿」「柿日和」などがある。
また、生活の季語に「干柿」があり、傍題に「柿干す」「吊し柿」「串柿」「甘干」「枯露柿」「柿簾」など豊富だ。
例句は、風変わりだった。
渋柿の如きものにては候へど 松根東洋城
漱石を師と仰ぎ、蛇笏を育てたともいわれる東洋城は、大正天皇から「俳句とは如何なるものか」と問われて、この俳句を持って答えたそうだ。「俳句は、渋柿のように味わい深い」ものだと。
秋の季語代表ともいえる「紅葉(もみじ)」も植物の季語。傍題に「もみづ」「夕紅葉」「谷紅葉」「紅葉山」「紅葉川」などがあり、「初紅葉」「薄紅葉」「照紅葉」「紅葉且つ散る」など季語として独立しているものも多い。
この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉 三橋鷹女
「もしこの樹に登ったならば鬼女になるに違いない」という解釈。
季語「夕紅葉」が、恐ろしさをも感じられるほどの美しさを表している、季語あっての句。
青空の押し移りゐる紅葉かな 松藤夏山
「押し移る」は時勢や境地などが移り変わること。時間、歳月の経過と、「青空」を上五に置くことで、鮮やかな紅葉とその周りの対比が生きている句なのだそうだ。
今回の句会でも、時間の経過、空間の広がり、肌に触れた感触、音、色、とりあわせなどが評価されたり、指摘されたりしていた。
日々、五感を研ぎ澄ませることが、きっと俳句に通じているのである。
わたしの句は、こちら。
川底のたゆたふ小石薄紅葉
先生からは、季語を「初紅葉」にすると初々しい感じが出るが、「薄紅葉」とどちらを選ぶか、詠みたい情景をしっかり見定めることが大切とアドバイスをいただいた。
季語「薄紅葉」は、じゅうぶんに色づいていないまだ淡い紅葉。
”たゆたう小石”に”迷いを持つ心”を詠みたくて、まだ色づく途中の「薄紅葉」をセレクトしたのだが、その目論見自体が弱く、伝わっていないことがわかった。
11月の兼題は、冬の季語「小春」「風邪」。急に冷えみ、山は澄み、すでに冬の始まりを感じている。
今年はまだ、柿を食べていません。
2018年、5年前に記事紹介した「甘草屋敷」の枯露柿の写真です。
柿干してけふの独り居雲もなし 水原秋櫻子
きのうは山が澄んで見えたので、車で3分のマウンテンビュースポットに写真を撮りに行きました。
八ヶ岳の麓が、紅葉している様子が見えました。
傍題の「もみづ」は新鮮でした。「紅葉する」という意味の動詞だそうです。
南アルプス連峰が、迫るように見えていました。
稲刈りあとの田んぼが、秋の風景ですね。
稲刈の空を拡げてをりにけり 仲寒蟬
左から、薬師岳、観音岳、地蔵岳と並ぶ、鳳凰三山。
左から、アサヨ峰、甲斐駒ヶ岳、鋸岳。
山の名前を知りたい方は、こちら。
買い物に行ったときに見えた富士山。すっかり冬の顔ですね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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