急に冷え込んだ週末。今シーズン初めて、おでんを煮た。
大根一本分に見合った分量の大鍋いっぱいのおでんだ。夫婦二人でもこの量を煮るのだが、この週末は上の娘が友達を連れて帰ってきた。たっぷり煮ておけば、いつでも食べられてよかろうとも思ったのだ。
卵を茹でるときだけ、いつもと違った。人数分の2個そして失敗したとき用にプラス1個で合計3個茹でるのだが、今回は5個だ。
茹で方は、今ではなつかしい『伊東家の食卓』の裏技で覚えたものを実践している。塩は使わない。鍋に湯を沸騰させ、冷蔵庫から出し立ての冷たい卵を静かに入れ、茹でるだけ。これまで覚えたなかでいちばん失敗が少ない方法だ。投入時にひびが入ることもあるが、今回は成功した。
鍋に水を放ちながら、卵を剥いていく。
ゆっくりと。焦らずに。
しかし、4個目で集中が途切れた。キッチン以外の仕事をいくつか並行してやっていて、出かけなくてはならない用事もあり、時間を気にしていた。
案の定、白身ごと殻を剝いてしまった。
「あーあ」とため息をつきつつも、ふふっと笑う。失敗した茹で立ての卵を、キッチンに立ったまま塩をつけて食べるのが好きなのだ。
ハンプティ・ダンプティ へいにすわった
ハンプティ・ダンプティ ころがりおちた
おうさまのおうまをみんな あつめても
おうさまのけらいをみんな あつめても
ハンプティを もとにはもどせない (谷川俊太郎 訳)
マザーグースの詩を思い出した。
卵は、壊れやすいもの。固茹でにしたところで、小さな雑念ひとつで傷ついてしまう。そして傷ついたりわれたりしたものは、もとには戻せない。最後のひとつを、一度目を閉じてから胸のなかで響く雑音の数々を鎮め、静かに剥いた。
そう。料理って、そのときどきの作る人の心を表す怖さを持っているんだよね。だからこそ、手料理の味は代えがたいものなのだけれども。
白身が傷ついた茹で卵さんです。熱いうちにいただきました。
残り4個はぶじ、おでんの鍋へ。煮始めのおでんです。
1時間半煮てから、じゃが芋投入。男爵だからこのあと30分くらい煮ました。
最期にはんぺんと牛筋を入れて、出来上がり。男爵、ちょっと硬めでした。
大根がいちばん好き。辛みの強い和辛子を、たっぷり添えて。
娘と一緒に選んだというお皿を、お友達からいただきました。 うちにある杯と似た色合いの、重宝しそうな大きさの素朴な感じのお皿です。
さえさん、おはようございます。
これから寒くなる時期はおでんがさらに美味しく感じられますね。
おでんには思い出があって、学生時代、学食で食べたおでんが忘れられません。
当時、大学の近くで下宿していたので自炊するのが面倒くさい時はいつも遅くまで開いている学食で早めの夕飯を食べていました。
おでん定食は卵とじゃがいもと大根という具だったのですが、なぜかそれにハマって冬はよくこのおでん定食を食べていました。
おでんの卵が大好きで顔馴染みになった学食のおばちゃんに通常1個のところを2個入れてもらってました。
おでんの卵はおでんの汁を吸ってすごく美味しかったんです。
そういえばそのおでんの卵はいつもキレイに殻が剥かれていてツルツルでした。
ゆで卵は私はいつも水から茹でていました。
お湯が湧いてから入れるのですね・・知りませんでした。
次回、ゆで卵を作るときに試してみます。
さえさんの作るおでん、すごく美味しそう!
私の好きな具ばかりで嬉しくなりました。
papermoonさん
こんにちは~。久しぶりのおでん、美味しかったです。娘もお友達も、とっても喜んでくれました。
学食のおでん、あったかい思い出ですね。おでんの卵、我が家では、他の具を食べたあとにつぶして汁に馴染ませてご飯にかけて食べるんですよ。おでんを煮た翌朝の楽しみになっています。
茹で卵、お湯に入れるときにはお玉を使うと割れにくいと思います。どうぞ、お試しあれ♩
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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