きのうの夕方、雲がいつもと違う様子をしていた。
空の写真図鑑『空の名前』を開くと、「叢雲(むらくも)」に似ている。
以前、同じような雲を見たときにも調べたのだが、『源氏物語』にこうある。
風騒ぎ 叢雲迷ふ 夕べにも 忘るる間なく 忘られぬ君
乱れ迷う雲と一途な気持ちの対照が、印象的に表現されている。
なぜだろうか。
群がり立つ雲のさまを見ていると、胸騒ぎがしてくる。
胸のなかにあるしんと凪いだ湖に、理由もなく波紋が広がっていく。
何もない。心を乱すものなど何もない。
そう思いながらも、何もないわけがないとも考える自分もまたいる。
過去にも、未来にも、そして今このときにも、波紋の種はいくつも眠っていて、目覚めるときをたぶん待っている。
叢雲は、そんな悩みの種を目覚めさせようとしているかのように、胸を揺すってくる。
空の雲を眺める。ただそれだけのことに、どれだけ多くのことを感じてきただろう。どれだけたくさんのモノを貰ってきただろう。
午後4時頃。ゴミ出しロードの帰り道に見た風景です。
まるで八ヶ岳が噴火でもしたかのような雲でした。
八ヶ岳は再び雪化粧して、また解けて。
夕暮れ間近の5時半頃。定点観測地点で。
雲たちは、風に流され形を変えて。
南アルプス連峰の甲斐駒ケ岳に沈む夕陽。
瞬時に色や形を変えていきます。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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