朝、コンタクトレンズを入れようとして、そのレンズのカーブに目をとめた。
ワンデータイプのレンズを使っている方はご存知だと思うが、レンズには表裏があり、カーブが丸くフィットする方を瞳につける。裏をつけてしまうとフィットしないため目がごろごろする。だが、今朝のレンズのカーブは表裏が見分けにくい微妙なカーブになっていた。
そのとき思った。
「人工のコンタクトレンズでさえ、ひとつとして同じものはないんだ」
絵本『誰も知らない世界のことわざ』(創元社)に載っていたスペインの諺
あなたは、私のオレンジの片割れ。
を思い出したのだ。
この愛のささやきは、ひとつとして同じオレンジはなく、半分にしたオレンジがぴったり合わさるのはその片割れだけ、というところからきたとか。
愛情豊かな国、スペインらしい素敵な諺だ。
さて。コンタクトレンズである。
結局そのレンズは、表も裏も使いものにならず、廃棄した。たまにあるのだが、不良品だったのだ。確かに人工物だって、まったく同じものはないかも知れない。だが、人の目レベルではっきり違っていていいわけがない。
「あーあ、やんなっちゃう。この納得体質」
自ら嘲笑する。何事もまず受け入れてしまう。とりあえず納得してしまう。そういう性質(たち)なのだ。悪い癖と言ってもいい。
夫は逆にすぐには納得しない性質で、常にきちんと見極めようとしているので、いまだたがいにその性質に、驚いたり、助けられたりもする。助けられるのは、無論わたしの方が多いのだが。
新しいコンタクトレンズをつけてウッドデッキに出ると、雨上がりの朝ならでは。けろじがあちらこちらにいた。小さい。今年生まれたばかりのアマガエルたちだろう。じっと顔を見て歩くと、それぞれ大きさも色も表情も違っていた。
カラーで洒落た絵本です。51の諺が載っています。
これが「あなたは、私のオレンジの片割れ」のページです。
きのうは、雨上がりのウッドデッキに、けろじがいっぱい!
「蛙の子は蛙」なんていいますが……。
同じような顔をしているようで、よく見ると違います。
性格も、それぞれ。きみはずっと隠れてるね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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