『デフ・ヴォイス』シリーズは、3冊出ていて、その2冊目を手話教室の友人に貸していただいた。
順番は前後したけれど、以下の紹介はこちら。
1冊目『デフ・ヴォイス』
龍がどういう姿形をしているかは知っているだろう? 龍には、ツノはあるけど耳はない。龍はツノで音を認知するから、耳が必要なくなって退化したんだ。使われなくなった耳は、とうとう海に落ちてタツノオトシゴになった。だから、龍には耳がない。聾(ろう)という字は、それで「龍の耳」と書くんだよ。
こんな言葉から始まるこの小説は、聴覚障害を持つ人を核に据えたミステリーだ。主人公、荒井は「Codaコーダ」(両親ともにろう者である聴こえる子)であり、紆余曲折あり手話通訳を仕事にしている。結婚はしていないが、警察官のみゆきとその娘、小学2年の美和と3人で暮らしている。
第1話「弁護側の証人」
ろう者である林部が強盗容疑で逮捕された。被害者は犯人の顔をは見ておらず、「金を出せ」と脅されたという。生まれながらにろう者である林部が、果たして「金を出せ」という言葉を発せられたのか。そこを争点に裁判が進められていく。
第2話「風の記憶」
ろう者をターゲットに詐欺を働くろう者、新開が逮捕された。新開は、口話が達者な自分が、ろう者を助けてやっただけだと開き直るのだが。
第3話「龍の耳を君に」
美和の同級生、英知は、聴覚に問題はないが話すことができない。美和に頼まれ、荒井は英知に手話を教えていたのだが、ある日、隣りのアパートで起きた殺人事件を英知が目撃してしまう。警察は英知の証言を信じないだけではなく、シングルマザーである英知の母、真紀子に嫌疑をかける。
今回は、ろう者だけではなく発達障害のある英知を登場させ、手話で話す人の事情や環境もひとりひとり違うのだということを際立たせている。
ラストに明かされた被害者の謎めいた行動の理由には、ハッとさせられた。
発達障害について深く切りこみ描くことで、心から誰かを大切に思うこととはどういうことなのかを、問いかけてくる小説となっていた。
「家族とは何かを描いた」と帯にあるように、荒井自身だけではなく登場するいくつかの家族に焦点を当て描かれていました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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