久しぶりに映画館へ行き、『ドライブ・マイ・カー』を観た。
2014年に刊行されたときに、原作である『女のいない男たち』は読んでいたが、8年も前のこと。すっかり忘れていた。
忘れていたからこそ、何の情報もなく白紙から楽しむことができた。
読む→忘れる→観る→再読。これこそが、最強の楽しみ方だと実感した。
〈cast〉
家福悠介【西島秀俊】舞台俳優で演出家。
渡利みさき【三浦透子】優秀で寡黙なドライバー。24歳。
高槻耕史【岡田将生】俳優。音を慕い、家福をリスペクトしている。
家福音【霧島れいか】家福悠介の妻。女優、脚本家。
〈story〉
舞台俳優で演出家の家福は、ひとり娘を3歳で亡くすが、その後も愛する妻、音と穏やかに暮らしていた。けれどそれから18年が経ち、音は急死した。彼女は亡くなる前、家福に何かを打ち明けようとしていた。2年後、広島での演劇祭に愛車サーブで向かった家福は、無口で優秀な専属ドライバーのみさきと出会う。そしてオーディションでは、音から紹介された男優、高槻と再会する。歯車が狂い始めたのは、どこからなのか。
映画は、「ドライブ・マイ・カー」のほか短編集のなかの「シェエラザード」と「木野」のエピソードも取り入れていた。
「木野」は、この短編集のなかでもっとも惹かれる小説だったと記憶している。
BAR木野があった根津美術館の辺りは、夫が会社を立ち上げたところで、経理を担当し始めた30年近く前のこと(大学ノートに貸借対照表を鉛筆で物差しで線を引きかいていた)になるが、よく歩いた。きっとあの頃のあの場所には、「誰にとっても居心地のいい」BAR木野があったに違いない。
おれは傷つくべきときに十分に傷つかなかったんだ、と木野は認めた。本物の痛みを感じるべきときに、おれは肝心の感覚を押し殺してしまった。痛切なものを引き受けたくなかったから、真実と正面から向かい合うことを回避し、その結果こうして中身のない虚ろな心を抱き続けることになった。
重い過去を背負ったみさきと過ごすうち、家福のなかに大きく空いた”虚ろ”が炙り出されていく。
傷つくことを先送りにし目をそらしていた家福と、母親に愛されないまま傷ついた心を抱え大人になったみさきは、遠く北へと向かった。
久しぶりに、開きました。
表紙絵は「木野」のBARでしょう。
映画では、赤のサーブでしたが、小説では黄色のサーブ900コンバーティブルでした。
*ひとりごと
岡田将生くん、二十歳の頃の映画『ハルフウェイ』から注目していたよ。『重力ピエロ』もなつかしく思い出す。『悪人』でどうしようもない奴を演じたときには、将来が楽しみな俳優になったとうっとりしたっけ。なんだか、美しい俳優になってしまったなあ。
さえさん、見て来られたのですね~
ストーリーの中に一風変わった劇が怪しかったです。(笑)
そうそう、突然始まるやつめうなぎの語りにもびっくりしました。
女優の三浦透子さんが、一度も笑顔を見せなかったので、朝ドラに出ている時と感じが全然違ってました。
最後の韓国だけがちょっと意味がわからなかたんです。
村上春樹の映画は3度目ですが、一度も小説は読んだことがなく、勝手にこれが村上春樹ワールドなんだろうなって思っています。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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