シチリア島では、州都パレルモで3日間を過ごした。
「シチリアで、のんびりと魚が食べたいね」と、わたし。
「ゴッド・ファーザーの故郷で、ワインを飲むのもいいよね」と、夫。
ただそんな理由から、シチリアにやって来た。なのでガイドブック片手に、当てもあるようなないような感じで歩く。バスも走っているが、3日も歩けば満喫できるだろうとふらりふらりと歩き回った。
せっかく遠くへ来たのだから、あそこもここも行きたいという気持ちもあるが、でもせっかくの休暇なのだから、のんびりひとつの街を堪能するのもまたいい。誰かと一緒の旅はその辺のバランスが難しいのだが、そこがふたり似ているから気が楽だ。歩き回って夕方昼寝をして、夜散歩がてら夕飯を食べに行く。そんなパターンが多くなる。
さて。まったく知らなかったのだが、パレルモはアートの街だった。
海沿いを歩いていて、最初に目に留まったのが海のアートを並べた店。船の端材に魚の絵をペイントした壁飾りや、海や魚に関する本などがひしめきあっている。2階は、絵画教室のギャラリーになっていた。
街なかへと歩きヴィッチリア市場では、多くの店の外壁に絵画アートが描かれていて驚いた。そして、絵だけではなく、アクセサリーや文具、陶器、革製品、帽子など様々な手作り作家の店が並んでいた。
途中、自宅の外壁にアートを描いている男性に出会った。オーストリア人で、ヨーロッパを回ってからパレルモに渡り、絵を描きながら暮らしているという。
彼は、夫に言った。
「パレルモは、美しい街だ。何しろ人があったかい。たった4日しかいないのかい?4カ月だって足りないよ。ここで仕事を探して暮らしたほうがいい」
パレルモで暮らすことはできないが、笑顔で人なつっこい人たちが多く暮らす街なのだと1日もいれば判った。そして、これまでに感じたことのないやわらかな解放感に、ハッとさせられてもいた。
降りそそぐ太陽と広がる海と豊かな大地のせいだろうか。
3つの岬を持つ島シシリアは、三脚巴(三本足)のメドゥーサ、トリナクリアがシンボルだという。そんな島の三角形が作り出すパワーによるものか。
アートを生み出す人の心の流れは、太陽と海と大地のパワーに、きっと少なからず影響されているのだろう。
オーストリア人の彼が描いたという外壁アートです。
何のお店か判りませんが、なんだか素敵。
魚屋さんには、なぜかゴッド・ファーザー。
画廊というより気軽に入れそうなギャラリーも、点在していました。
木工アートのお店。店内で制作しているところが見られました。
これは、リサイクル雑貨のお店でわたしが選んだキーホルダー。
ワインのコルクをリサイクルして作っているそうです。
海のアートのお店で、夫が選んだ船の端材アートです。
そのお店の前には、こんなふうに港が広がっていました。
トリナクリアです。何とも不可思議なシンボルですね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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