呼吸器内科で咳喘息の可能性が高いと診断された際、いくつかの質問を受けた。
「咳をするとき、喉がイガイガした感じになりますか?」
一瞬考える。イガイガした感じになるのは、咳が出始めてからだっけ? それとも、咳が出る前からだっけ? たいていは咳が出始めてからだけど、咳が出る前にもそういう感じ、あったような気もする。
なんとも曖昧である。曖昧ながら考えつつ答えるが、医師に穏やかに言われてしまった。
「はいか、いいえで答えてくださいね」
思い出したのは、末娘がしていたバイト先の上司の話だ。
「忙しい時でも、上の人に判断を仰がなくちゃならないときってあるじゃん。それなのに、質問に答えてくれない人がいて困るんだよね。話がいつも違う方向にいっちゃって、だからどっち? って訊きたくなるんだよね」
彼女は、さらに言った。
「YesとNoのプラカード、持たせたいって、いつも思ってる」
診察室でそのときの話を思い出しながら、わたしは心のなかでプラカードを持った。「はい」「いいえ」と答えていくが、クイズの答えよろしく「迷うな~」というときがある。自分でもよくわからない、はっきりしないときだ。さすがに「迷うな~」とは言えないから、状況説明を始めてしまう。医師は嫌な顔一つせず聞いてくれたが、それはプラカード効果だったのかも知れない。話は最低限にと釘を刺し、それを理解していると受け取ってくれたのだ。
毎日、いろいろな人の話を聞いているのだろう。評判のいい呼吸器内科なので待ち時間も長い。できる限り短時間できちんとした診察をと考えると、「はい」か「いいえ」でと促されるのもわかる。じゃあ、実際にプラカードにしたら? と想像するが、「はい」か「いいえ」で答えられないことが多いから、こうして顔を見て話を聴いているのだ。プラカードもチェックシートもありえない。
特に病院では、話を聴いてほしい人も多いのだと思う。こんなに痛いんだ、苦しいんだ、辛いんだ、不安なんだ。待合室にはお年寄りが多かった。質問をされると、答えよりもまず自分の話したいことがあふれでてしまう人も多いのだろう。そして答えたくない質問ははぐらかす術を使う人も。以前、違う病院の待合室でこんな会話が聞こえてしまった。
「普段甘いものを、よく食べますか?」
「今日は、食べていません」
そのときは、こりゃプラカード必要だなと思ったが、看護士さんは我慢強く質問を繰り返していた。
コスモスとは、宇宙のことですか? はい? いいえ?
いつも通る道端に咲いているコスモスです。
白いコスモスも、清楚で素敵。
咲きかけのワインレッドのコスモスも、とっても可愛い。
おじいさんに付き添ってきた、おばあちゃんに確認
ここの病院に、かかったことありますか?
有りますけど私、
そうじゃないのよ、おじいさんがですよ
だから、ありますよ、私
いつになっても話が噛み合わない、そんなことあった。
自分も、もうすぐにそんな感じーー、なりたくないな
コスモスが咲くと、いつも思い出す詩があります。
高田敏子の詩です。
コスモスの咲いている道を
通りすぎて行った人
帰りも、この道を通ってください そんな詩です
悠里さん
お年寄りとの会話って、難しいし忍耐が必要ですよね~。
わたしも、今でさえ忘れっぽいんですが、そういうふうにならないように気をつけたいと思います。
秋桜の詩、素敵ですね♩
花を愛でる暇もなく、通り過ぎてしまうこともありますよね。帰り道は、秋桜に気づくかな?
こんにちわ。
喘息は、季節的なものですか?
辛くて、息苦しく、ところ構わずでしょう。
私ではありませんが、ちょっと身近な人で、春先と寒くなりかけの時とか、とてもつらそうでした。
どうにも止まらないのです。
薬で、なんとか抑えてはいましたが。
辛い、痛いをきちんと聞いて欲しいですね。
一言の言葉で、同じつらさもずいぶん緩和される事でしょう。
私の今、通っている所もこちらから聞かないと詳しいことは言ってくれません。
痛くないやろと、決めつけるみたいに言います。
でも私は痛いです!と、言ってやります。
ぱすさん
咳喘息と診断されたのは初めてなんです。2週間くらい前かな?
咳が出始めたのは5年ほど前なんですが、ずっと原因がわからなくって。
薬を飲み始めてだいぶ楽になりました。このまま治るといいんだけどな。
そんなんで、わたしはまだ呼吸器内科では「聞いてほしい!」というほど切羽詰まったこともないんですが、周りを見回すとお年寄りばかり。診察時間が長くなるのも仕方がないか~と思いました。
質問の趣旨をきちんと理解して、自分の考えを明確に伝えられるようになりたいものです。
痛いときにもちろん、痛いって言っていいと思いますよ。お医者さまも人間。それぞれ違いますね~
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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