アントニオとも、ペドロと同じく去年ピントに滞在したときに出会った。
バル「BAR LA BODEGA」の店主で、初めて飲みに行ったとき、わたしは付け焼き刃で覚えたスペイン語フレーズを使いたくて、カウンターに並んでいたタパスのひとつを指さして、彼に訊いた。
「¿Qué es esto?ケ エス エスト(これは何ですか?)」
すると、なにか答えてから、耳を引っ張って豚の鳴き声のものまねをしてくれた。「豚の耳の煮込み」だった。
それから、スペイン語をまったく話せないくせに使いたがるわたしをおもしろがって、いろいろ教えてくれた。
「それは、『muy bueno~(とてもいい○○)』。そっちなら『muy buena~(とてもいい○○)』。スペイン語には、男性名詞と女性名詞があるんだ。それに合わせて、語尾のoとaを使い分けるんだよ」
男性名詞、女性名詞の違いはなんとなく知っていたので、そう言ってるんだろうなとわかった。
夫は、いちげんさんの外国人にフレンドリーに接してくれるアントニオにカメラを向け、ひとつだけ覚えていたスペイン語で訊いた。
「¿Puedo tomar tu foto?プエド トマール トゥ フォト(あなたの写真を撮っていいですか?)」
アントニオは、9年前、店をグランドオープンしたときの写真を持ち出し、一緒に撮ってくれと笑顔で応じた。
その写真が、思いのほかよく撮れていたので、夫はペドロの写真館に持ち込んだ。彼にプレゼントしたいから、プリントしてほしいと。
すると、ペドロが言ったのだ。
「これ、アントニオじゃないか。俺たち、amigoアミーゴ(友達)なんだ」
1年前のそんなことを思い出しながら、彼のバルを訪ねた今年。
ふたたびバル「BAR LA BODEGA」のカウンターでお酒が飲めることを喜んでいたのも、つかの間だった。
アントニオは、バルを閉める決意を固めていた。夫よりひとつ年下。引退してもおかしくはない歳だ。もうじゅうぶん働いた、そんな気持ちだという。
いつかもう一度、ピントに行くことがあったとしても、たぶんそのときにはバル「BAR LA BODEGA」はなくなっているだろう。
「おつかれさま」という言葉は、スペイン語では何というのだろうか。

去年と変わらない「Orejas de cerdoオレハス デ セルド(豚の耳)」。

カウンターには、タパスが並んでいます。

アンチョビを頼むと、オリーブをのせて出してくれました。
「爪楊枝で、アンチョビを巻いてオリーブに刺して食べるんだ。ふたつの味が混ざり合っておいしくなるのさ」
たぶんそんなふうに言いながら、ひとつ刺してくれました。

こちらは、大晦日の写真。

またしても、生ハムを頼もうと思っていたのに、間違えて生ハムサンドをオーダーしてしまいました。

大晦日の午後は、話もできないほど、人がいっぱいでした。
ピントでのご縁、楽しく読ませていただきました。
スペイン語、勉強していかれたんですね。
学生時代 少し楽だと思って第2外国語でドイツ語を選択したら、男性名詞、女性名詞があって面倒だったことを思い出しました。
担当の先生に、男性か女性かどうやって決めるの?なんてあほな質問もしました。(笑)
語学は難しいですね。でもさえさんちゃんとアントニオさんとコミュニケーション取れていてすごい!
アンチョビオリーブ美味しかったでしょうね。
次回ピントに行っても会えないと思うと寂しいですね。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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