今年初めに、漆塗りの椀がひとつ割れた。
毎朝味噌汁をよそう、5つ揃いの椀である。5人家族だった頃の名残りの揃いの食器も、こうしてひとつ欠けふたつ欠けていくのだろう。
この夏、新しい椀をようやく買った。2つだけの夫婦椀だ。
添えられた紙に、こんなことがかいてあり、一瞬首を傾げた。
あなたの ご飯は 木ですか 石ですか
ご飯は 椀 飯(めし)は 碗 ライスは 皿
そうか、と気づく。
いつも使っている陶器の茶碗の〈碗〉の字は、陶器だから石片だったのだと。
ご飯はよそわないが、味噌汁用の椀は〈椀〉。漆を塗られた木の器だ。
木だと思って手にしたからか、思いのほか軽い。汁をたっぷり入れて片手に持つ椀だから、軽い木の器が使われてきた。先人の知恵だ。
毎日使っているものにも、知らなかったことの数々が隠れている。
「そうなんだよ」
とでも言うように、食卓デビューした新しい椀は、ちょっとすましているかのように見えた。
新しい椀。夫婦(めおと)椀です。
見えないところが、洒落ています。
お盆の朝ご飯は、残り物盛りだくさんで豪華。
いただきものの「ダビデの星」入りのお味噌汁をよそって、お椀もうれしそう。
☆シミルボンからお仕事をいただいてかいた原稿第3弾をアップしました。
「カラダの欲望、ワタシの本音」という企画です。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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