封を開けると、ふわりと海の匂いがした。
そんなこだわりの海苔をいただく機会があり、このところおむすびランチが増えている。
海苔が美味しいので、手巻き寿司をしようということにもなる。
いただいたのは千葉「森傳」の海苔だが、全国各地の生産地の海苔を扱っているそうだ。
海苔の養殖には「遠浅の海で」「潮の満ち引きが激しく」「海水と淡水が混ざり合う場所」という条件が適しているという。
どこかというと「有明海」「瀬戸内海」「伊勢湾」「三河湾」「東京湾」「仙台湾」で、なかでも4割を占めるのが「有明海」。南が中心だが北は「仙台湾」まで、様々な地で海苔は養殖されている。
「海苔」で、思い出す小説がある。『窓ぎわのトットちゃん』だ。
いつ読んだのかも忘れてしまい、部屋の本棚にも見当たらないないそのベストセラーのなかで、とても印象に残っているエピソードを思い出すのだ。
トットちゃんが通っていた学校は、弁当のおかずに「海のものと山のもの」入れるのが決まりだった。例えば、豚肉の生姜焼きと焼き鮭でもいいけれど、梅干しと海苔だっていい。
裕福な家庭ばかりではないし、弁当を作る暇もない親もいるだろう。
それでも最低限、子供のことを考えて「海のものと山のもの」を入れる。
たくさんのことはできなくても、それだけ、ひとつだけのことなら、なんとかなるかもしれない。
そんな子育て中の親と子への思いやりに満ちた決めごとだったように、思う。
わたしも、忙しい子育て中、この「海のものと山のもの」に救われたひとりだ。
母親は、いつだって自分ができないことを悔やんでいるし、そんな自分を責めている。
そんなときどきに「海のものと山のもの」は、だいじょうぶ、と優しく背中を撫でてくれた。今日はこれしかできなかったけれど「海のものと山のもの」だけは入れたじゃない、だいじょうぶだよ、と。
ところで、おむすびの海苔、わたしはパリパリ派。食べる直前に巻く。
そしてパリッと海苔が割れ、海の匂いを感じる瞬間、今もこのエピソードをうっすらと思い出すのである。
海苔ありきでかんたん手巻き寿司にした夕餉。
海苔もだけど、パークスで買った魚と野菜は、ほんとうに新鮮で美味しかった。
「森傳」の海苔。本日2月3日、恵方巻きを食べる節分は「海苔巻きの日」、2月6日が「海苔の日」だそうです。
一人で食べた、おむすびランチ。
☆『地球の歩き方』山梨特派員ブログ、更新しました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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